阿武隈カエル図鑑(7)

ツチガエル


蚊に刺されているツチガエル
分布
日本全域。北海道は南西部の平地のみ。

大きさ・容姿
30mm〜60mmくらい。。

別名イボガエルと呼ばれるように、体表にいっぱいついているイボイボが最大の特徴。色は地味な黒土色で、土の上にいてもなかなか気づかない。全体が黒いので、きれいな写真を撮るのが難しいカエルのひとつ。
大きさはヤマアカガエルなどより2回りくらい小さい。
体表が乾いた感じなのも特徴。捕まえると臭い粘液を分泌するというが、やってみたことはない。
最初はイボイボがちょっとグロテスクに感じられるかもしれないが、よく見るとつぶらな瞳をしており、他のカエルに比べても可愛らしい顔だ。
『レッドデータブックふくしまII』(福島県生活環境部環境政策室自然保護グループ:編集・発行 2003/03)では、カエル類では唯一「準絶滅危惧種」に指定されている。
カエルでは他にモリアオガエルとカジカガエルが「希少種」に指定されているが、その二種よりも絶滅危惧度が高いとされているわけである。


産卵
産卵期はかなり遅く、全国的には5月から8月くらいらしい。我が家の池には2008年の8月から棲みついたので、まだ産卵の様子は確認できていない。
卵は水草や、水中に倒れ込んだ枝などに絡めるように産むらしい。


孵化〜オタマジャクシ時期
オタマジャクシは80mmほどまで巨大化し、多くはそのまま越冬するというが、冬の寒さが厳しい阿武隈ではどうやって生き延びるのだろうか。池は冬の間、かなり厚い氷が張るのだが……。
2010年5月、川内村上川内で行われた「げえる探検隊」というイベントにて、同行したプロの自然観察員のかたが、田圃わきの水たまりにて2匹の巨大なオタマジャクシを捕まえた。そのかたも「なんでしょうね、こんなに大きなオタマジャクシは初めて見ました」とおっしゃっていたが、これこそツチガエルのオタマジャクシだった。
オタマジャクシのまま越冬するというのは本当だった。発見した水たまりは、耕作放棄された田圃の脇に自然湧水が溜まっている一角で、こうした環境は極めて珍しい。なるほど、こうした奇跡的な環境でしか生き延びられないのかと、はっきり理解できた貴重な体験だった。

他の水棲生物と一緒に捕まったツチガエルのオタマジャクシ


上は大きく育ったアカガエルのオタマ? 大きさがかなり違う


指先と比較。すでに後ろ脚が生えている


観察のため、そのままわが家に連れて行くことに……


連れてきた直後。2010年5月23日


6月7日 後ろ脚がずいぶん太くなり、時折ジャンプもする


2010年6月13日 前脚も生え、だいぶカエルらしくなり、ツチガエルの模様もはっきりしてきた


先に脚が生えてカエルになろうとしているのと、まだオタマの形に近い兄弟


池の中に放した直後


完全に尾がなくなる頃には、本当に小さいカエルになっている。巨大だったオタマとは対照的
このツチガエルのオタマジャクシは、2010年6月7日現在もわが家で元気にしている。後ろ脚はかなり太くなり、ぴょんと跳ねたりもするが、前脚はまだ出てこない。ツチガエルのオタマジャクシは相当長い時間かけて変態するようだ。

変態
5月23日に捕獲したオタマは、6月7日には後ろ脚がしっかり生えてときおりジャンプ。その後、12日には前脚も生えたので、まだ尾が残っている状態で池に放した。
変態後は、水辺から遠くに行くことはなく、常に水のそばにいることは分かっている。
冬眠から醒めるのも早いようで、水の下の泥の中にじっと身を潜めている。

2008年8月の終わりに、突然我が家の池に棲みついた2匹のツチガエル↑
ひと月経ってもまだいた↓ 2010年6月現在も、ツチガエルは池に棲みついている。



↑ヤマアカガエルと一緒にいるツチガエル。これだけ大きさが違う。


鳴き声
ギューギューという鈍い、締めつけられたような声。

性格
いつ見てもほぼ同じ場所にじっとしている。近づいても慌てることなく、そのまま息を潜めている。そのほうが安全だと思っているのか、単に鈍感なのかは分からない。自分の数センチ隣に人間の靴がどかっと着地するなど、いよいよ危ないという段になって、ようやくピョンと水に飛び込む。
いちど気に入った水辺が見つかると、そこから離れようとしない。えらく保守的というかズボラというかおっとりしているというか、人間から見ると愛らしい性格ともいえる。しかし、地味で地面と見分けがつかなかったり、なかなか動かなかったりするので、うっかり踏みつけそうで怖い。
かつては都市部でも田圃の畦道などにあたりまえのようにいたカエルらしいが、この村に引っ越してきて4年目でようやく確認できた。しかも2匹だけ。個体数は激減しているようだ。
原因は田圃の水を抜くようになったからだといわれている。オタマジャクシのまま越冬するツチガエルには、冬でも凍りつかない池や水たまりが必要で、田圃の水が抜かれてしまうと繁殖場所が極端に少なくなる。
個人宅の池にはたいてい鯉などが飼われているので論外。大きな沼などでも、秋になってからも泳いでいるオタマジャクシは他の水棲生物やヘビなどにとっては貴重な餌となるのだろう。無事に変態を遂げるまでには相当な幸運が必要だと思われる。それだけに、他のカエルよりも大事にしたくなってしまうのである。
準絶滅危惧種から絶滅危惧種へと移行するのも時間の問題かもしれない。
(10/06/07 updated)

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